載籍浩瀚

積んで詰む

青山剛昌『名探偵コナン』十一巻〜十五巻

 名作ミステリ漫画『名探偵コナン』。作者である青山剛昌はミステリというよりラブコメなんて言っちゃってるが、実際にはミステリとして出来がいい作品も多い。

 そこでA〜Eという評価軸に物語の良し悪しの+/-を加えて既刊を振り返っていきたい。

 ◯は黒ずくめ登場回。

 

第十一巻

FILE.2-4 テレビ局殺人事件 D

 わりと分かりやすいトリック。ただこれも絵じゃないとなかなか厳しい漫画ならではのトリックだと思う。それにしてもコナンくんの世界、一般人が銃持ちすぎ。

 

FILE.5-7 コーヒーショップ殺人事件 D

 小粒でよくあるトリックの応用編。とはいえメインはそちらではなく妃弁護士の初登場。それと蘭に関することには頭が働かないコナンくんが見れたりもする。

 

FILE.8-10 霧天狗伝説殺人事件 B

 人の手が届かない高い梁に吊るされた死体。この謎を解く時に出てくる物理トリックがはちゃめちゃで面白い。霧天狗伝説とも上手く絡められてある上に現場に残った謎だらけの手がかりが一つ一つはまる感覚が気持ちいい。

 

第十二巻

FILE.1-3 月と星と太陽の秘密 B

 博士のしょぼい暗号と、踊る人形リスペクトの面白い暗号を少年探偵団たちが解き明かす。暗号自体も面白いけど、暗号を解いた先に出てくる謎が面白い。

 

FILE4-6 ◯ゲーム会社殺人事件 E

 テキーラが出てくる。事件と使われているトリック自体はそこまででもない。黒ずくめの組織が取引に使っていた場所がカクテルっていうバーだったっのは驚き。

 

FILE.7-FILE.1 ホームズフリーク殺人事件 D+
 死体硬直を使った自殺に見せかけるトリックと、その後の爆破トリックは面白いけど色々無理ある気もする。あと動機がやばい。ここで平次に正体がバレる。

 

第十三巻

FILE.2-4 三つ子別荘殺人事件 D

 三つ子のうち誰が真犯人か探すアリバイ崩し。電話線にも電力が供給されてるっていう豆知識が手に入る。なるほどね。

 

FILE.5-7 イラストレーター殺人事件 C

 コナン大好き糸を使った物理トリックの一つ。糸と針でトリック作るのは時代遅れってよく言うけどコナン見てると単純に思いつかないだけなのではって思う。糸を使っても面白いものは面白いよ。トリックに使った材料を予測していくのが鮮やかで良い。

 

FILE.8-10 大怪獣ゴメラ殺人事件 D+
 殺人に至ってしまった経緯が物悲しい。あと足跡に使ったパーツをさりげなく示唆するように伏線が張られているのが見事。

 

第十四巻

FILE.1-3 追い詰められた名探偵 連続2大殺人事件[1] D+
 2大殺人事件というわりにいつもどおりな感じの回。蘭姉ちゃんに正体がバレかける。作中に出てくる暗号は有名なやつだけど、それが被害者のダイイングメッセージって特定するまでのロジックが結構面白い。

 

FILE.4-8 追いつめられた名探偵 連続2大殺人事件[2] C

 2大殺人事件のしっかりしている方。工藤パパとママが出てくる。工藤優作がめちゃくちゃかっこいい。出てくる派手な人物誤認トリック、若干無理があるかもだけどちゃんと納得感もある。

 

FILE.9-FILE.3 スキーロッジ殺人事件 C+

 またスキーロッジでの殺人事件に巻き込まれたコナン一行。消えた凶器の謎が光る。それはともかくこの回の目玉は探偵役を務めた蘭の仕草。犯人を名指すときのあのシーンはコナンでも屈指の名シーンだと思う。

 

第十五巻

FILE.4-6 人気アーティスト誘拐事件 D-

 結構無理筋な暗号が出てくる。

 

FILE.7-9 金融会社社長殺人事件 D

 密室×毒殺モノ。ハウダニットがメインでそれ自体は面白いけど、嫌な論理の飛躍の仕方が目立ってる。

 

FILE.10-FILE.3 名家連続変死事件 C+
 トリックのためのトリックという面白い試みが行われている。一方証拠品に関しては結構苦心したんだろうなあ......。「犯人を推理で追い詰めてみすみす自殺させちまう探偵は殺人者とかわんねーよ」という名台詞を吐くのもこの回。今読み返すと火事から月光の事件での苦い経験を思い出しての発言だと分かる。平次も出てくる。

 

名探偵コナン(11) (少年サンデーコミックス)