載籍浩瀚

積んで詰む

『神様になった日』初回感想

愚かな人類の選択のせいで世界は終わる――。 

  一か月後に世界が終わる。それを知っているのは世界で自分だけで、自分のそばには「神」と名乗る謎の少女がついてくる。

 『CLANNAD』や『Angel Beats!』を語った麻枝准というシナリオライターが、原点に立ち返って作った物語だ。

 

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第一話感想

たっくさんの宝石を詰めた、宝箱のような思い出となった。

 物語はいきなり神様と名乗る少女の回想から始まる。CLANNADでいう幻想世界みたいなところに居座った神は、物語の全てを見渡して「なにもかもが新鮮じゃった」と呟く。映画監督が座るような折り畳みの椅子に座って、誰かのインタビューに答えるように。そうして、舞台を日本のどこかの夏へと移す。

 そして神が地上に降臨する。「全知全能」を自称し、「オーディン」と名乗るその少女は高校三年生で幼馴染に片恋慕している成神陽太という少年の前に現れる。

 オリジナルアニメの第一話に必要なのは、引きと説明だ。この先も視聴者に見てもらうための引きと、原作者を除いて誰も知ることのない世界観の説明。それをなさなければ、視聴者は置いてけぼりになり離れていく。しかし『神様になった日』というアニメは、この点をしっかりと満たした状態で一話を閉じた。あまりに上手に、テンポよく。

 諏訪盆地とか中央本線とか固有名詞が出ている以上舞台は日本だし、ストーリーの基本的な進め方は、片思いし続けている幼馴染を神の力を使って振り向かせることにある。だから一話で幼馴染にフラれるのは当たり前だし、神様が陽太のそばに居続けることにも疑問を挟む余地はない。ただし少女が神様でなければの話だが。

  麻枝准の作品のノルマの一つである野球回を一話でこなし、彼特有のハイテンションギャグを挟み続ける。ちょっといい雰囲気になるかと思いきや、その雰囲気をぶち壊す。その節々にキャラクターの説明や背景を入れていく。この緩急は麻枝作品でしか味わえない麻薬みたいなもので、物語における麻枝節の一つだと思う。麻枝准という劇薬に侵されたファンは、これだけでとぶことができる。とんで第一話に満足して、ゆっくりと第二話を待つことができる。ただし世界が終わらなければの話だが。

 少女が神様で、世界が終末に向かうから、視聴者は続きを求める。物語の続きへの求心力が生まれる。あまりにも強い引きで、上手な一話だと思う。

 

少女は神か

わしは全てを知っておる。それだけのことじゃ。

 少女について喋りたいけど、あまりに謎すぎるし、なにより麻枝作品って謎を全部回収するかと言ったらそうじゃないから考えたくない。考えたくないけど、あからさまな伏線っぽいのはいくつかあったので、とりあえずまとめておく。

  • 心を読むことができる

  少なくとも、成神陽太の心を見透かすことはできるのだろう。

  • 未来を知っている

 雨の話、バスの話、競馬の話で分かるのは未来を知っているということだけ。大局的な世界への干渉はできないと思う。できるのなら傘を買うのではなく雨を止ませればいいし。あと存在しなかった五球目の話が気になる。世界線の話?

  • 全知ではない

 バスケットボールや野球のルールを知らなかったり、競馬についても無知だった以上なんでも知っているわけではない。

  • 全知である

 幼馴染の情報を握っていたし色々知っているんだと思うけど、知っていることと知らないことの線引きが分からん。幼馴染の知り合いだったオチに一票だけど......。

  • 局所的に世界に干渉できる

 居候したり、野球部を意のままに動かしたりしている以上、陽太の周囲なら動かせるのかもしれない。弱体化ハルヒみたいな。

  • 神様になった日

 まだ神様になっていない?

 

 ハルヒとか、それこそ陽菜とかみたいな神秘的存在ではなさそうではある。

 なんも分からんけど、多分最後までなんも分からないんだと思う。Charlotteの時も結局なんで能力が発動したかとかよくわからないまま終わったし。CLANNADだって幻想世界とのつながり分からんし、AIRも公式に説明はされてないし。クリフハンガーみたいにして終わるんだと思う。つまりファンが勝手に考察して公式設定にする部分。

 

麻枝准の原点

われは全知の神である。

 なんか原点に立ち返る作品らしい。麻枝准の原点ってどこ?って感じだが『AIR』とか『CLANNAD』とかなんだろうか。それとも久弥直樹に師事していた『MOON.』『ONE』『KANON』とか。個人的には「Love Song」シリーズとかの世界観を原点にしてくれてたらうれしいけど、多分『AIR』と『CLANNAD』だろうなという気がする。神がめちゃくちゃ出てくるのは「Love Song」だから可能性はある。特報PVみたいなのにも流れてたし。ぜひ手に取って聴いてほしい。めちゃくちゃ良いアルバムなので。

 

まとめ~或いはゼロ年代オタクの亡霊の話~

無駄じゃぞ。勉強したところで無駄じゃと言っておる。

 今は2020年らしいですが、なんと今期アニメの原作執筆陣には麻枝准だけじゃなく、『車輪の国、向日葵の少女』や『G線上の魔王』のるーすぼーいとか、『ひぐらしのなく頃に業』で竜騎士07とかいるらしい。それだけじゃなくて、『ハヤテのごとく!』の畑健二郎とか『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』の入間人間とかもいる。この時期だけタイムスリップした可能性もあるし、なんか久しぶりにアニメを見よっかなという気分になっています。世界が終わるんかもしれん。

 初回で感極まってオタクの長文早口感想を書き散らしてしまいましたが、多分二話以降は大人しく見ます。全部終わったら感想を書きます。

 なにはともあれ、最後までめちゃくちゃ面白い作品であることを願う。

 俺たちの麻枝准が帰ってきた!!!!!

 

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